蛍を見に行った。

夕方まで、密閉された空間で作業をしていたので、外に出ると、無性に自然の空気に触れたくなり、車を走らせた。

名栗、有馬ダムの近く。

名栗村有馬ダム近く

この辺、蛍見物のポイントとなっているらしく、日没頃から、1人、2人と人が集まりだす。

そのうち、ふ~っと小さな光が飛び始める。
子供の小さな歓声があがる。

しばらく、「おぉ」とか「ほっ」とか、小さく独りつぶやきながら、飛び交う蛍の光を楽しむ。

帰り道、思い出していたのは、『蛍三七子』の事だ。

ちばてつやの短編。
初出は1972年、少年マガジン。

これは、小学生当時、読んでとても感動したのをおぼえている。

(たぶん)単行本に、収録されないまま、1977年刊行された、ちばてつや漫画文庫に収載された。
とても薄く『蛍三七子』1編のみ収載。
待ちわびて買ったものなので、もちろん、オレが持っているのは、初版本。
当時180円。
何度も読み返しているので、ボロボロだ。

蛍三七子 表紙

まあ、簡単に言ってしまえば、蛍を大事に守ってきた三七子と、そこに製紙工場を建てようと、次々と埋め立ててゆく会社との対立的なお話なのですが、初めて読んだのが小学生の時だったから、なんかすごく胸に迫るものを感じたし、やりきれなさや、怒り、問題意識みたいな物も芽生えたな。

蛍三七子 内容

ラストシーンは今見ても、感動する。

今の意識で読んでみると確かに描き足りていない部分もあるのかも知れないけど、その先の事は、読んだ者の心の中で育てばいいのだ。

少なくとも、オレは当時感じた問題意識を今も持ち続けているし、それは、現在の原発問題に対する意識とも共通するものだな、と改めてこの作品を読み直して感じた次第。

どうやら現在は絶版になっていて、Amazonでは、中古にそこそこの金額がついていた。
今こそ、再版されればいいのにな。

※実際に本の題名に使われているのは『蛍』ではなく『螢』の文字